2015年2月27日金曜日

沈黙の螺旋理論(SoST)のエージェントシミュレーションレビュー(2)


残り3つ。

Malarz, K., & Kulakowski, K. Indifferents as an interface between Contra and Pro, Acta Phys. Pol. A 117 (2010) 695. arXiv:0908.3387.

多くの世論に関する社会物理シミュレーションは2つの意見を扱ってきた。しかし実際の投票で多くの人は投票しない。ということで無関心な投票者を導入する。

Sznajdモデルはスピンのモデル。隣接したスピンS(i),S(i+1)を考える
S(i)=S(i+1)なら S(i-1)=S(i)=S(i+1)=S(i+2)(揃う)
S(i<>S(i+1)なら S(i-1)=S(i+1), S(i+2)=S(i)(逆転)(これが基本。逆のパターンも提唱されている)

で、これにニュートラルを加える。
S(i)=S(i+1)なら S(i-1)=S(i)=S(i+1)=S(i+2)(揃う)
S(i<>S(i+1)なら S(i-1)=S(i+1)=0(ニュートラルになる)
どちらかがIなら変更なし

初期状態δ<1/2にPro,Consを与え、1-2δをニュートラルとする。

SoSを表現するために、シミュレーションの初期でPを隣にもつCをすべてIに変更する。#P>#CならC→Iというルールも導入。横軸としてδをとって縦軸に最終的なCの比率を出力。

δが大きいとマジョリティ一色になりやすい。ニュートラルを入れたことで社会学がいう極化現象に近いモデルができた。

イジングモデルを使ったものは他にも沢山ありそう、というかLatane→Axelrodの拡張の方がリッチなことが言えそう。でも単純なオートマトンだと何を言いたいモデルかわかりにくいなぁ。


Shiyu Du, Jiayin Qi, 2014, Journal of Networks, Vol 9, No 8, pp.2003-2012,, Multi-agent Modeling and Simulation on Group Polarization Behavior in Web 2.0

これもイントロから関連研究までが丁寧なので細かく読んでみる。

Abst.

Web2.0大事だけど、だれも集団極化現象の重要なファクターを説明していない。本研究は3つの次元を統合する(個人・グループ・トピック)。続いて、MASでシミュレートするよ。

Introduction

昔から人は流されるよね(通りで何人の人間が空を見たら周りの人がつられて空を見るか(ミルグラム,1968))。パニック購買もよくある現象だ。ノエルノイマンのSoSから見てもインターネット上で極化は起きやすいのではないか。インターネット上では意味のない模倣が簡単に起きてしまうかもしれないが、一方で重要な情報を伝えるためのツールになるかもしれない。しかしどのような条件で集団極化を引き起こすのかは深く研究しなくてはいけない。

極化はいろいろやられている(1990,1986の)。最初の極化の発見は、集団のリスキーシフトだ(1961,Moscovici and Zavalloni)。このメカニズムを明らかにするためにシミュレーションはいろいろやられている。(2003,2011)

もちろんいろんな方面からのアプローチがある。

1.心理学的アプローチ:集団圧力などなど
2.システムサイエンス:ネットワーク構造(文献16,17)
3.その他としてBHWモデル(18)

が、どいつもこいつも一個の要因しかやっとらん。全部載せモデルを作ったるわい。しかも、要因のランキングもつくったる。

Theoretical Bases

3つの理論的ベースを使う。

A:Social Comparison Theory(Festinger,1954)

人は他人と比較することで自身を理解したい絶対的な基準がない場合、他者との比較になる。大きく違う・多様性がある、ときにはその欲求は小さいが似ていると大きい。能力において大きく、意見において小さい(以上Webからまとめ)

そこからTajfel,1979がSocial Identity Theoryを開発。それがIn-group/Out-groupです。イングループと理解すると似る、これが極化の原理

B:Informational Influence Theory

Stoner,1961曰く、人々は議論すると、よりリスキーな意思決定をする。Myers1972曰く、リスキーになるというより、初期の状態を強化する。

また、人は個々の情報処理をすることなく説得力のある意見についていく。またHinsz1984は多様な論点があるほうが集団極化は起きやすいことを実験で示した。(消費者行動?)

C:Influence Factors Of Group Polarization

近年の極化研究は、個人・グループ、トピックの点から研究している。

個人
Xieは個人の独立思考能力が高ければ極化は起きにくいと言っている。著者もこれを採用

グループ
Hayes(2010)は、集団の類似性と密度、また最初の印象を与えるオピニオンリーダーの影響を強く受けると言っている。

トピック
センシティブな話題は極化しやすい(政府、法律、戦争。。。)

まとめるとFig2

Model

A:仮定
1.メディアは考えない
2.個人が意見を受け入れることで得られると認知した利得が閾値を上回ったら、個人はその意見を受け入れる。その際、個人で情報処理は行わない。

極化の指標:スピード:80%の個人が極化したら、極化のパーセンテージ

B:プロセス

モデルはいろいろ複雑そうだけど、要するに周りが変えてたら変える、自分の自信が強ければ変えにくい、みたいなかんじ。

結論としてはあたりまえ「個人の態度が強ければ極化は起きない」「集団が似ていると極化」

んー、モデルの細かいところがわからないけど、丁寧なような、意味がないような。ただAxelrodモデルの丁寧な拡張でだいぶ良くなる可能性もあるか?

P. Gawronski, M. Nawojczyk, K. Kulakowski, 2014, eprint arXiv:1407.2742, Opinion formation in an open system and the spiral of silence

SoSを扱うよ。そして集団に流入出があるモデルを考える。エージェントはオピニオンS_i,カリスマC_iを持って、これらは固定。オピニオンはN(0,1)に従う。カリスマは平均3のポワソン分布。エージェントはキューに入っていて、FIFOで流入出する。

カリスマ値の大きなリーダーがシステムから消えてからどの程度影響が残るか見ているようだけど、グラフの説明が足りなかったりで何言いたいのかわからない。あと飽きた。

【感想】
総じて、理論背景まではかっちり書いているけどモデルになると急にヘロヘロになるのが多いような。あとは「こういう条件でSoSが生じました」だけだと、そうでしょうねぇで終わってしまう。投票までモデル化して社会的選択理論とくっつけるか(しんどそう)、なんとかジレンマを持ち込むか(無理がありそう)、とにかく一工夫がないとインパクトのあるものにならないだろう。

ざっと見た感じでは、イジングモデルやLataneのような周囲の状態で態度(発言)を変えるもの、意見分布の総和をとって閾値で発言・沈黙を決めるもの、利得と戦略をもったジレンマゲーム系がある感じ。さて、自分はどうやるか。。。




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