2017年6月10日土曜日

間接互恵で2次情報を扱った実験研究レビュー

来週出発の学会のポスター。著者欄しか埋めてない。5分間トークが当たってほしかったのによりによってポスター。最近学会発表が億劫でしょうがない。現実から逃げられるなら何でもいいので別件でやらなくちゃと思っていたレビューをざっと。

間接互恵では2次情報の扱いが重要だけど実験でどんなのがやられているのか。なんとなく「2次情報まで人は使うのか?」「2次情報がある前提ならどう使うのか?」「2次情報は協力を促進するのか?」というアプローチがありそう。

2次情報まで人は使うのか?

Milinski, M., Semmann, D., Bakker, T. C. M. & Krambeck, H.-J. Cooperation through indirect reciprocity: image scoring or standing strategy? Proc. R. Soc. B Biol. Sci. 268, 2495-2501 (2001).

匿名で繰り返しのギビングゲームをやって、提供・拒否をカウントしていく。拒否された率を測るのだが、周りがIS的と(つまり提供者へは提供、拒否には拒否)と振舞っていると想定したときの推定値とほぼ同等の拒否され率。ただしST(シンプルスタンディング)的と想定した拒否率とは大きく乖離している。よって2次情報はほとんど使われずIS的に振舞っている。

真島理恵. 間接互恵性状況での人間行動, in 「社会の決まり」はどのように決まるのか (ed. 亀田達也) 117-147 (勁草書房, 2015).

ランダムマッチでは、CtoG,CtoBに差はないが、相手選択が可能なときにはCtoG>CtoBとなる。つまりランダムマッチングではIS的に振舞い、2次情報を使って寄付する相手を選ぶ。相手選択可能な実験状況ではDtoBが外されているので、SH(GBBB)、SJ(GBBG)のいずれかは分別できない。(少なくともST(GGBG)ではないということになるのかな)

Swakman, V., Molleman, L., Ule, A. & Egas, M. Reputation-based cooperation: Empirical evidence for behavioral strategies. Evol. Hum. Behav. 37, 230?235 (2016).

実験で1次情報・2次情報も見れる状況を作る。2次情報にコストがある場合、無い場合を用意。主要な結果は、a) 1次の協力(C/D)が主要な効果を持つ(Cには提供するしDには提供しない) b) 人は2次情報をよく使う(人によってはコストがかかっても) c) とくにDの時の2次情報(DtoB/DtoG)をよく使い、DtoBは報われる(正当化される裏切りはOK)d) 個人差でかいよね。


2次情報がある前提ならどう使うのか?

真島理恵 & 高橋伸幸. 敵の味方は敵? 間接互恵性における二次情報の効果に対する理論的・実証的検討. 理論と方法 20, 177-195 (2005).

CtoG,CtoB,DtoC,DtoBまでの4状況を評価させる。評価指標としては「お人よし」「社会的適切さ」「関係重視」「他者からの評価予測」「提供行動の意図」。CtoBはお人よしと評価されるが、社会的適切さは低い。提供意図については CtoG>CtoB, DtoB>DtoCとなる。(つまり2次情報は使っているしどちらかというとSJ的ということか)

鈴木貴久 & 小林哲郎. 評判生成規範の類型がパーソナル・ネットワークのサイズに及ぼす効果. 社会心理学研究 30, 99-107 (2014).

CtoB、DtoBの2シナリオを評価させて平均より高いか低いかでG/Bとわけることで人をSH,SJ,IS,STに割り振ってサポートネットワークのサイズを従属変数にする。CtoBの主効果が有意。つまりCtoBをBadと判断する人はサポートネットワークのサイズが小さい。SH,SJ的な人は世間が狭いよ、と。

2次情報は協力を促進するのか?

Bolton, G. E., Katok, E. & Ockenfels, A. Cooperation among strangers with limited information about reputation. J. Public Econ. 89, 1457-1468 (2005).

0次、1次、2次と情報を増やすことで協力率は増加する。ただし協力コストが高いときにだけこの効果は確認できる

Ule, A., Schram, A., Riedl, A. & Cason, T. N. Indirect Punishment and Generosity Toward Strangers. Science. 326, 1701-1704 (2009).

2次情報じゃないけど、ギビングゲームに「提供」「拒否」に加えて「懲罰」を導入する。懲罰を選ぶとコストを払って相手の利益を減らせる。さて、懲罰はコストがかかるのだが実際に相手の利得を減らせる「実懲罰」と実際は合いの手利益が減らない「象徴罰」で比較すると象徴罰では裏切りが最も利得を上げるけど、実懲罰ではImage rewarderが一番利益をあげる。(ちょっと二次情報ダイレクトの研究ではないかも)

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